葬儀で「その人らしさ」を伝える最短の方法が、写真と短い言葉を集めた思い出コーナーです。自宅で準備して会場へ搬入すれば、時間がなくても形になります。
本記事では、写真の選び方・手作りメモリアルボードの作り方・費用相場と所要時間、設置動線や権利配慮までを、当日対応できる手順で具体的に解説します。
この記事のポイント
写真とメッセージで故人らしさを伝える思い出コーナーが有効。
この記事で分かること
葬儀の「思い出コーナー(メモリアルコーナー)」は、写真・遺品・メッセージで故人像を可視化し参列者の対話を促します。
自宅準備でも会場搬入でも実施可。材料費は数千円〜で手作り可能。
会場規約・肖像権・宗派配慮といった注意点を押さえ、短時間で形にする手順とチェックを示します。
要点(短く)
結論
葬儀の思い出コーナーは、写真・愛用品・メッセージを一箇所に展示する追悼スペース。故人の人となりを短時間で共有し、弔意と会話を生む工夫です。
進め方(6ステップ)
以下の手順で進めます。
- 写真・品を選定
- 台紙レイアウト
- 印刷・ラベル作成
- ボード設置
- アナウンス
- 片付け・返却
チェックすべき要点(5つ)
作成する時は次の要点を確認します。
- 写真とメッセージで故人像を共有
- メモリアルボードは手作り可
- 自宅準備→会場へ搬入が楽
- 会場規約と動線を事前確認
-
肖像権・宗派配慮を徹底
要点まとめ|思い出コーナーの効果と実施可否(短時間で故人像を共有)
写真と短文メッセージを核にすれば、短時間でも実施でき、会話を生み満足度が上がります。
思い出コーナーは、葬儀に参加する人たちが故人像を具体的に共有し、会話を生みやすくする装置です。写真・愛用品・短い言葉を「見やすく・触れやすく」配置するだけで、弔意の表現が自然に広がります。
自宅で準備して会場へ持ち込む方法でも十分に成立します。会場の規約や宗派への配慮、転倒・混雑の安全対策を押さえれば、小規模な家族葬でも満足度が上がります。
おすすめできるケース/不向きなケース
参列者が故人の交友関係で幅広い、または久しぶりに会う人が多いときは特に有効です。エピソードの共有がきっかけで、受付・会食会場での会話が自然に生まれます。写真が少なくても、愛用の帽子や道具、賞状など1〜2点があるだけで「語り」が始まります。
一方、厳粛さを最優先し展示を控えたい宗派・会場や、会場が極端に狭い場合は不向きです。必要最小限の卓上フォトスタンドとカード記入台のみに縮小し、会場方針を尊重します。
効果:会話のきっかけ・弔意の共有・記憶の定着
写真の前で立ち止まる動作が自然な「会話の起点」になります。短文キャプションがあると、面識のない参列者同士でも話し出せます。弔辞や喪主挨拶へ接続する話題づくりにもなり、故人像の解像度が上がります。
また、会葬者の滞在時間を適度に延ばし、弔意を言葉にしやすくします。これは遺族のグリーフケアの観点でも意義があります(葬祭実務の手引き・遺族支援章の一般的整理、2024年)。
先に押さえる注意点(会場規約・宗派配慮・権利)
会場の壁面へのピン留め禁止、火気・強粘着剤の禁止、通路幅の確保などの規約を事前確認します。宗派・宗教観では、色味や装飾の度合い、音の有無に配慮します。
写真は肖像権・著作権に留意し、他者が大きく写る場合は許諾やトリミングで対応します(消費者庁・著作権周知資料の一般的留意点、2023年)。
基本構成とアイデア集|写真・メッセージ・メモリアルボード
写真10〜20枚と象徴品数点を視線に合わせ、短文で伝えれば十分機能します。
見やすい枚数と視線の高さ、読みやすい文字サイズを優先して構成します。無理に点数を増やすより、テーマで絞る方が伝わります。
思い出コーナーには何を置けばよい?
近況写真・若い頃の写真、趣味の道具、好きな本やユニフォーム、家族や友人の短文メッセージが定番です。多すぎると散漫なので「写真10〜20枚+象徴アイテム数点」が見やすいです。
写真の選び方と並べ方(時系列・テーマ別・キャプション)
写真は「幼少・青春・趣味・家族」など4テーマに分け、各4〜6枚に絞ります。にぎやかな集合写真は一部を拡大して主役を際立てます。
キャプションは1枚あたり20〜40字で、撮影年・場所・簡単な一言を入れます。フォントは読みやすい明朝体またはゴシック体を使い、12〜14pt相当を目安にします(家庭用プリンタの可読性ガイド、2024年一般実務)。
メッセージの集め方(短冊・付箋・QRフォーム)
会場で書いてもらうなら短冊カードや付箋を用意し、カテゴリごとに色を変えると読みやすくなります。
事前に集める場合は、家族LINEやメールで「20〜60字の思い出」を募集します。高齢の参列者には電話口で代筆し、内容確認を必ず行います。QRフォームを併用すれば遠方の友人からも回収できます。
メモリアルボードの作り方(手作り/既製品活用)
手作りは発泡スチロール板やスチレンボードに台紙を貼り、写真を両面テープで固定します。キャプションは白地のラベルを使い、余白を確保して詰め込み過ぎを避けます。
既製品のフォトフレームやコルクボード、折りたたみ式のイーゼルを活用すれば設営が早くなります。落下防止のため、足元に耐震ジェルや滑り止めを敷きます。
自宅で準備して会場に搬入する方法
自宅でA3台紙に仮配置→スマホで俯瞰撮影→配置を確定→印刷・固定の順で進めます。搬入はA4クリアファイルに写真をまとめ、ボードは薄手で軽量なものを選びます。
会場では、受付開始の30〜45分前に設営し、動線を塞がない位置を選びます。高さは目線のやや下(床から140〜150cm)を中心にすると混雑時でも見やすいです。
準備手順とチェックリスト|最短で形にする流れ
工程を時系列で固定し、最小構成に絞れば短時間でも品質を保てます。
時間がないときは、写真20枚以内・見出し3つ・アイテム2点のミニマム構成に絞ります。
自宅で準備するコツは?
写真を時系列・テーマ別にフォルダ整理し、A3台紙に仮配置→スマホで俯瞰確認→印刷の順が効率的です。搬入は折り畳み可能なボードとA4ケースでコンパクトにします。
素材整理→レイアウト→印刷→掲示→案内→回収
- 素材整理:テーマごとにフォルダ分けし、重複を間引きます。
- レイアウト:A3台紙で仮配置し、俯瞰写真で客観視します。
- 印刷:L判〜2L判中心、主役はA4で拡大して奥行きを出します。
- 掲示:視線の通り道と高さを意識し、足元の安定を確保します。
- 案内:受付で「左手に思い出コーナー」の一言案内を徹底します。
- 回収:返却が必要な遺品はタグで持ち主を明記し、家族代表が確認します。
必要な道具と代替案(ない場合の現場対応)
- 基本:写真、両面テープ、はさみ、ラベル、マスキングテープ、スチレンボード、イーゼル、滑り止め、ウェイト。
- 代替:イーゼルがなければ会場の長机に斜め掛け、ウェイト代わりにペットボトルを紙袋で隠し、安定させます。
- 表示:A4で「一方通行でご覧ください」などの案内を印刷し、混雑を緩和します。
混雑を防ぐ動線設計と安全対策(転倒・詰まり)
入口近くの「立ち止まりやすい角」を避け、会場壁面の中腹に配置します。通路幅は最低90cmを確保し、イーゼルの脚は白テープでマーキングします。
混雑時は「入口→ボード→退出」の一方通行導線を作り、必要に応じて司会・受付が誘導します。転倒対策は滑り止め+脚部の重しで二重化します。
チェックリスト(抜け漏れ防止)
- 写真は各テーマ4〜6枚に絞った。
- キャプションは20〜40字で年・場所を明記した。
- 会場規約(掲示方法・面積・火気)を確認した。
- イーゼルの固定と通路幅90cm以上を確保した。
- 返却が必要な遺品にタグを付けた。
費用・期間・相場の目安|手作りと業者依頼の比較

手作り2,000〜8,000円、業者3〜7万円で目的と時間に応じ選択します。
価格は地域・仕様で差が出ます。以下は公開事例と実務聞き取りの平均的なレンジです(葬祭事業者公開例・印刷通販価格帯の横断確認、2024〜2025年上半期)。
手作りと業者依頼はどちらが良い?
手作りは数千円〜で柔軟、時間が取れない・大型出力が必要なら業者が安心です。期日が迫る場合は「自宅で素材準備→会場で最終固定」のハイブリッドが安全です。
手作りの材料費と内訳(写真・台紙・テープ・イーゼル)
- 写真プリント:L判20〜40枚で1,000〜2,000円(税込)。
- スチレンボード・台紙・ラベル:800〜2,000円(税込)。
- 両面テープ・マステ・滑り止め:300〜800円(税込)。
- イーゼル・簡易スタンド:0〜3,000円(税込、家にある場合は0)。
合計目安:2,000〜8,000円(税込)。
※家庭用プリンタのインク代は別途で、機種により差があります。
業者依頼の料金と納期(デザイン・大判出力・配送)
- デザイン+大判パネル1〜2枚:30,000〜70,000円(税込)。
- 追加ボードや造花装飾、写真補正を含むと上振れします。
- 納期はデータ確定から最短2〜3営業日、即日対応は特急料金が一般的です(印刷サービスの公開納期、2024年)。
準備に必要な時間の目安(当日対応のミニマム構成)
- 素材選定・スキャン・印刷:半日〜1日。
- レイアウト・固定:1〜2時間。
- 当日対応(写真20枚・見出し3つ):印刷済なら30〜60分で設置可能。
※火葬場や会場の入り時間によっては、前日搬入の可否を確認します(会場規約の一般的運用、2024年)。
コストを抑えるコツ(枚数絞り・再利用・デジタル併用)
- 主役写真をA4、その他はL判中心にして印刷量を抑えます。
- ボードやイーゼルは再利用前提で購入し、法要でも転用します。
- デジタル併用として、古いタブレットにスライドショーを流すとスペース節約になります(電源・盗難対策を要確認)。
比較早見(表にできる形)
項目:方式/内容/目安/注意点
手作り/写真+ボード+ラベル/2,000〜8,000円(税込)/時間は要するが柔軟
業者依頼/デザイン+大判出力/30,000〜70,000円(税込)/納期と修正ルール確認必須
当日対応/既存写真+簡易掲示/30〜60分/材料の現地調達はリスク大
口コミ・評判と注意点|良い事例/失敗事例から学ぶ
成功は枚数・高さ・案内の一貫性、失敗は過多と混雑を防げば回遊が改善します。
成功例は「1テーマ1枚のタイトル」「写真は各4〜6枚」「キャプション短文」を守っています。受付や司会からの案内があると、会場内の回遊がスムーズになります。
良い評価:故人像の共有・参列者の会話活性・満足度向上
故人の趣味や仕事が一目で伝わると、面識の薄い参列者同士でも会話が生まれます。「懐かしい」「知らなかった」という発見が弔辞・喪主挨拶の理解を深め、参列満足度が上がります。
家族からは「弔問に言葉が添えられた」「想定以上に思い出が集まった」という声が多いです。
気になる声:写真が多すぎる・掲示が混雑・見えにくい
失敗例の典型は写真点数の過多と高さの不統一です。低い位置に密集させると、混雑時に見えにくくなります。キャプションが長文すぎると読み切れません。
また、会場規約違反(強粘着・壁面への釘打ち)や、他者の顔が大きく写る写真の無断掲示はトラブル要因です。
回避策:枚数基準・高さ調整・カテゴリ見出しの追加
写真は各テーマ4〜6枚、合計10〜20枚の基準を守ります。高さは床から140〜150cm中心にし、子どもも見やすいよう下段に2〜3枚を配置します。
カテゴリ見出しをA4で印刷し、色分けで区別すると混雑時でも理解しやすくなります。入口と司会のアナウンスで回遊を促し、滞留をさばきます。
マナー・権利・宗教的配慮|トラブルを防ぐポイント
会場規約・安全・権利・宗派配慮の4点を先決し、家族合意の下で設置します。
安全第一で設置し、権利に配慮した写真選定、宗派の考え方への敬意を前提に進めます。
写真の権利・配慮は必要?
肖像権・著作権に配慮し、他者が写る写真は許可を得るかモザイク・カットで対応します。宗派・宗教観に配慮し、派手な装飾は事前に家族で合意を取ります。
肖像権・著作権・商標の基本と実務対応
他者が主役で写る写真は、本人または家族の許可を取り、難しければトリミング・モザイクで対応します。展示のためにネットや書籍から画像をコピーする行為は避けます。
使用するロゴ・ユニフォームは商標権に触れる場合があるため、個人の思い出の範囲での表示にとどめます(一般的な権利配慮の指針、2023〜2024年)。
宗派・宗教観への配慮(装飾色・表現・音の扱い)
仏式では白・緑・淡い色味が無難で、極端に鮮やかな装飾は避けます。神式では神前の配置や榊との取り合わせを確認します。キリスト教式は礼拝堂の規定に従い、電飾や過度な装飾を控えます。
音を伴うデジタル展示は、式の進行を妨げない音量・タイミングで使用します。
会場規約・火気禁止・安全面の遵守事項
壁面への直貼り禁止、ローソク・発熱体の使用禁止は一般的です。掲示はボード+イーゼルを基本とし、倒れ止めを二重化します。通路幅90cm以上を確保し、車椅子導線を塞がないようにします(会館利用規約の共通事項、2024年)。
よくある質問
メモリアルボードのサイズは?
会場机幅や人の動線に合わせ、A2〜A1サイズ1〜2枚が扱いやすいです。広い式場なら分散配置(入口・受付横・会食会場の3点)も有効。持ち運びは折り畳み式ボードや発泡スチロール板+イーゼルが軽量です。
予算の目安はどれくらい?
手作りは写真プリント・台紙・両面テープ等で2,000〜8,000円前後が一般的。大型パネル印刷や造花装飾を加えると1.5万〜3万円ほど。業者依頼はデザイン込みで3万〜7万円が目安です(地域・仕様で変動)。
準備期間はどのくらい必要?
素材選定とスキャナ・印刷で半日〜1日、レイアウトと組み立てで1〜2時間が標準。訃報後の短期でも「写真20枚以内・見出し3種」のミニマム構成なら当日朝でも形になります。
メッセージはどの形式が読みやすい?
付箋や短冊カードで1枚20〜60字程度に統一し、カテゴリ(家族・友人・仕事仲間)別に色分けすると読みやすいです。会場で書ける記入台を置けば参加感が高まります。
片付けと保管はどうする?
ボードは写真を外してクリアファイルに保管し、後日にアルバム化・フォトブック化します。返却が必要な遺品はタグで管理し、誰の持ち物か明記して紛失を防ぎます。
自宅葬・家族葬でも設置できる?
可能です。玄関〜リビングの動線上にA2ボード1枚+卓上写真立て2〜3点で十分機能します。スペースが狭い場合は縦型イーゼルやスライドショー表示で圧迫感を避けます。
どのレイアウトが見やすい?
「1枚=1テーマ」が鉄則です。幼少・青春・趣味・家族の4テーマに分け、写真は各テーマ4〜6枚。タイトル見出しと簡単キャプションを入れると滞在時間が伸びます。
まとめ
枚数・高さ・導線を決め素材を厳選すれば、短時間でも再現性高く形にできます。
素材の絞り込みと見やすい配置、安全と権利の配慮を先に合意しておけば、家族葬から一般葬まで規模を問わず活用できます。自宅準備→会場設置の流れにすると、当日の負荷も小さく済みます。法要やアルバム化に転用できるため、費用対効果も高い方法です。