定価がないため、読経・戒名・御車代・御膳料の内訳を知らないと金額が膨らみがち。本記事では、家族葬にも通用する目安と決め方、渡す順序、住職への連絡文例までをやさしく整理。初めてでも誤解なく準備できるよう、チェックリスト付きで解説します。

曹洞宗の葬儀お布施相場と考え方
お布施は定価がなく、読経・戒名・移動・会食の合計で幅が出ます。内訳を事前共有し、無理のない金額に整えることが肝心です。
お布施は本来「お礼」で金額規定がありません。公的資料でも定額の定めは示されていません(文化庁「宗教年鑑」等、公表資料・2024年)。
一方、消費生活相談では「説明不足による費用増」の相談が継続的に見られ、見積の事前確認が推奨されています。
総額の目安(家族葬/一般葬の幅と前提)
家族葬でも一般葬でも、読経回数(通夜・葬儀・初七日)と戒名の等級、移動距離、会食の有無で総額が変わります。実務では総額10〜50万円の事例が多い一方、都市部や移動を伴う場合はさらに増減します。「何にいくら」が分かる形で住職と共有すると安心です。
金額が上下する要因(地域・寺院との関係・戒名)
都市部はやや高め、地方は落ち着く傾向があります。菩提寺がある場合は平時からのご縁や寺院の運用で幅が出ます。戒名(曹洞宗では一般に「戒名」表記、他宗で「法名」と呼ぶ場合あり)は等級や院号の有無で目安が変わります。
「高い」と感じたときの見直しポイント
- 通夜読経を略して葬儀本座を重視するかを相談します。
- 送り迎えが不要なら御車代を簡素化できるかを確認します。
- 御膳料(会食代替)を地域慣習に合わせて調整します。
いずれも住職のご意向と地域のしきたりを尊重しつつ合意形成します。
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内訳と相場一覧|御布施・戒名(法名)・御車代・御膳料
内訳を「基本(読経)」「戒名」「移動(御車代)」「会食(御膳料)」に分解し、各目安と注意点を把握します。相場は地域差が前提です。
お布施は合算ではなく内訳ごとに検討します。公的資料は「金額規定なし」を示すに留まるため、具体額は地域慣習と寺院の運用に依存します。下の表は家族葬(通夜+葬儀)を想定した目安例です。
項目 | 内容 | 目安 | 注意点 |
---|---|---|---|
御布施(読経料) | 通夜・葬儀・初七日(当日繰上げ含む) | 5〜25万円 | 座数・読経回数で変動。初七日を後日に回す地域もあり。 |
戒名(法名) | 戒名授与(院号・位号の有無) | 5〜30万円以上 | 宗派用語の違いに留意。等級で幅大。趣旨と希望を率直に相談。 |
御車代 | 寺院⇄式場の移動謝礼 | 5千〜2万円 | 距離・回数で調整。送迎手配時は簡素化可の例あり。 |
御膳料 | 会食の代わりの謝礼 | 5千〜1万円 | 通夜・葬儀のどちらで渡すかは地域差。会食実施時は不要例も。 |
読経料(通夜・葬儀・初七日)の目安と決まり方
読経料は「座数×内容」で考えます。通夜読経・葬儀本座・繰上げ初七日の3枠が一般的ですが、地域により繰上げを行わない場合があります。時間や回数を確認し、不要な重複を避けます。
戒名(法名)料の目安と等級の考え方
戒名は通常、道号・戒名・位号などの構成で、院号を付すか否かで目安が変わります。曹洞宗では「戒名」と表記するのが一般的で、他宗で「法名」と呼ぶ場合があることを併記すると誤解を防げます。等級にこだわりがある場合は、趣旨(人柄や志向)と予算を合わせて住職に相談します。
御車代・御膳料の相場と地域差
移動が短い・送迎手配がある場合は御車代を簡素化できることがあります。御膳料は会食を行わない場合の代替謝礼として渡す地域がありますが、どの座で渡すかは地域差が大きいので、寺院の慣習を事前に確認します。
封筒とのし書きの基本(御布施/御車代/御膳料)
封筒は仏事用の無地(中袋なしでも可)を用い、表書きは「御布施」「御車代」「御膳料」と分けます。氏名・住所は裏面に書きます。遠方で現金書留や振込を用いる場合は、事前に寺院の意向を確認し、受領の方法(受取書や礼状)を取り決めます(会計実務上の根拠が必要な場合の配慮)。
準備の手順(抜け漏れ防止)
- 葬儀の形式と座数(通夜・葬儀・初七日)を決めて住職へ共有します。
- 戒名の方針(等級・院号の有無)と趣旨を相談します。
- 移動条件(距離・送迎)と御車代の要否を確認します。
- 会食の有無を決め、御膳料の扱いを整えます。
- 封筒・表書き・渡すタイミングを決めて当日担当者を明確にします。
チェックリスト(当日までに)
- 内訳と金額の目安を住職と共有したか
- 読経回数と時間割が確定しているか
- 移動手段と御車代の要否が合意されているか
- 会食の実施/御膳料のどちらかに整理できたか
- 封筒・表書き・渡し役・受領方法を決めたか
(参考:金額規定なし=文化庁の公表資料・2024年、見積や説明の重要性=国民生活センターの注意喚起資料・2015年、相談動向まとめ=同・2025年。いずれも公的情報の要旨で、地域差・寺院差を前提に運用します。)
段取りと期間の目安|依頼〜通夜・葬儀当日の流れ

初動は「寺院連絡→日程確定→内容確認」を最優先に整え、役割分担と金銭授受の段取りを前日までに確定します。
葬儀は時間との勝負です。まず、菩提寺がある場合は寺院の予定を最優先で押さえ、式場や火葬場の空きを並行確認します。火葬は自治体管理で枠が限られるため、日程確定の起点になります。「通夜→葬儀→火葬」の順が一般的ですが、地域や式場の混雑で変動します。
寺院への連絡と日程・読経内容の確認
寺院へは「故人情報・希望日程・会場・読経内容(通夜・葬儀・繰上げ初七日)」を簡潔に伝えます。連絡者・会場担当・当日の金銭授受の担当者を事前に指名すると混乱を防げます。通夜・葬儀の所要は各60〜90分が目安で、地域差があります。読経の座数と所要を確認し、重複を避けるようにしましょう。
戒名相談と塔婆・供物の準備
戒名(位号・院号の要否)は「趣旨・人柄・家風」を住職に共有し、過度な等級志向を避けて無理のない範囲で決めます。塔婆の本数、供物(供花・果物籠等)は会場の持込ルールと飾り付けの可否を確認します。請求主体(寺院/葬儀社/花店)を整理し、支払い窓口を一本化すると精算が容易です。
式中の参列作法(焼香回数・合掌・挨拶)
曹洞宗では焼香は通常1〜2回が多く、地域や寺院の指示を優先します。合掌・礼拝の流れは式前の司会アナウンスで再確認します。喪主挨拶は通夜・告別のいずれかで簡潔に実施し、弔問御礼は会葬礼状と合わせ二重表現を避けます。迷ったら司会・住職の指示に従うと安心です。
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家族葬の進め方|費用最適化とトラブル防止
家族葬は「式場・人数・内訳の見える化」で最適化できます。固定費と変動費を分け、不要な重複を削ると負担が下がります。
費用は会場費や安置料などの固定費と、返礼品・食事・車両など人数に比例する変動費に分かれます。相場は地域と季節要因で変動します。必ず「見積書の内訳」「不要オプション」「現金授受の手順」を書面で揃えます。
会場選びと寺院手配(直依頼/葬儀社経由)
菩提寺がある場合は寺院連絡が先、式場は「安置→通夜→葬儀」の動線で選びます。寺院直依頼は連絡が早く、宗教儀礼の齟齬が出にくいメリットがあります。一方、葬儀社経由は段取りと備品・人員の統合がスムーズです。どちらでも、寺院との金銭授受は遺族↔寺院が原則で、金額の最終確認は住職と行います。
香典収支と持ち出しの目安を把握する
香典収入は人数×平均額で概算し、返礼品・会食費・会場費を差し引いて持ち出し額を把握します。平均香典額の公定統計はありませんが、民間調査では親族が高め・友人知人が中位という傾向が続きます。香典はあくまでお気持ちのため、収支均衡を前提にせず、自己負担を確保して計画します。
項目 | 内容 | 目安 | 注意点 |
---|---|---|---|
式場費 | 通夜・葬儀のホール利用 | 5万〜20万円 | 祭壇一体型プランは重複計上に注意。 |
安置料 | 霊安室・面会費用 | 5千〜1.5万円/日 | 休日・夜間搬入で加算あり。 |
搬送・車両 | 寝台車・出棺車 | 1.5万〜5万円/回 | 距離・深夜割増を要確認。 |
返礼品 | 会葬・香典返し | 600〜3,000円/人 | 名簿精度と在庫調整でロス削減。 |
会食 | 通夜ぶるまい・精進落とし | 2,000〜6,000円/人 | キャンセル期限と最低数量を確認。 |
返礼品・供花・車両手配の調整ポイント
返礼品は「数量は少なめ→会葬者増に合わせ都度補充」の運用がロスを抑えます。供花はスタンド数より配置バランスを重視し、親族供花の名札表記を統一します。車両は「僧侶の送迎」と「親族の移動」を分け、タクシーチケット等を併用すると待機費用を抑えられます。
進め方の手順(初動〜前日まで)
- 寺院・火葬場・式場の枠を仮押さえします。
- 読経内容(座数)・戒名・供物の方針を合意します。
- 会場レイアウトと動線(受付・焼香・控室)を確定します。
- 見積の内訳と担当者(受付・会計・接待)を決めます。
- 現金授受(御布施・御車代・御膳料)の封筒と渡す順番を決めます。
チェックリスト(コスト最適化)
- 不要オプションを外しているか
- 返礼品の在庫と名簿が一致しているか
- 会食の最終人数と締切を確認したか
- 車両の距離・回数と待機条件を確認したか
- 住職への連絡者・会計担当が明確か
(根拠:日程は火葬枠に依存=自治体公開情報・2025年、費用は事業者公開事例の一般レンジ・2024〜2025年、見積重要性=国民生活センター注意喚起・2015年継続周知。いずれも一次情報・公的情報の要旨で、地域差・寺院差を前提に運用します。)
葬儀前後の注意点|お布施で誤解しやすいポイント
お布施は定価がないため、内訳と渡し方を事前合意しないと想定外の増額や行き違いが起きます。準備段階で必ず可視化します。
お布施は本来「お礼」で金額規定がありません。一方、費用説明不足によるトラブル相談は継続しています。誤解を避ける鍵は「内訳の確定」「役割分担」「渡す順序」の3点です。
内訳未確認による増額リスク(読経・戒名・移動費)
内訳は①読経(通夜・葬儀・繰上げ初七日)②戒名(等級・院号)③移動(御車代)④会食代替(御膳料)を分けて確認します。たとえば「繰上げ初七日を別日に行う」「送迎が複数回」などで合計が変わります。見積や金額目安は「座数×内容」「距離×回数」で整理します。
戒名等級・読経回数・座数の事前共有不足
戒名は等級希望より「趣旨(人柄・信仰観)」を先に伝えると過度な増額を避けられます。読経は「通夜・本座・初七日」の座数と所要を共有し、重複を防ぎます。迷う点は住職に率直に質問し、文面で控えを残します。
御車代・御膳料の渡す順序と金額の伝え方
御車代は距離・回数で決め、送迎手配がある場合は簡素化可かを相談します。御膳料は会食の代替として渡す地域があり、どの座で渡すかは地域差が大きいです。口頭だけでなく、担当者・金額・封筒名を一覧にして共有します。
渡す順序と担当の基本
- 通夜開始前:御車代(必要時)、僧侶控室で代表者が手渡し
- 葬儀前後:御布施(主謝礼)を喪主または会計担当が袱紗で手渡し
- 会食非実施時:御膳料を併せて別包で
※寺院の運用に従い、変更がある場合は事前合意します。
金銭授受のNG例とトラブル回避(受取書・お釣り・タイミング)
やってはいけないことは「受付で預かる」「名目混在」「直前の金額変更」です。封筒は名目別に分け、当日の渡し役を一人に固定します。領収書は性質上出ないことが多いですが、会計上必要な場合は「受取書」や「礼状」の発行可否を事前相談します。お釣りが生じないようあらかじめ金額を確定し、袱紗・白無地封筒を用意します。
連絡文例と金額決定の手順
連絡は「内容→移動→会食」の順で確認し、合意事項を短文テンプレで記録します。金額は内訳ごとに目安を住職とすり合わせます。
電話で骨子を確認し、メール/メモで要点を保存します。火葬場や式場の枠により順番が変わるため、日程は早期確定が要です。金額は「読経(座数)」「戒名(等級)」「御車代(距離回数)」「御膳料(有無)」で検討します。
住職への連絡テンプレ(電話・メール)
【電話要点】
- 故人情報(氏名・年齢・逝去日)
- 希望日程と会場(通夜・葬儀・火葬時間)
- 読経の座数(通夜・本座・繰上げ初七日の要否)
- 戒名の相談方針(趣旨・等級希望の有無)
- 移動条件(送迎の有無・距離の目安)
- 御膳料の取扱い、渡すタイミング
- 金額の目安と名目ごとの包み方
【メール/控えの書き方(例)】
件名:葬儀日程とお布施内訳の確認(◯◯家)
・日程:通夜○/○(曜) 18:00、葬儀○/○(曜) 11:00
・座数:通夜/本座/繰上げ初七日(実施)
・戒名:趣旨共有・等級は住職ご指示に従う
・移動:寺院⇄式場 往復1回(送迎手配あり)
・御膳料:会食なしのため1包を予定
・金額:目安ご確認のうえ、名目別封筒で準備
以上、ご確認お願いいたします。
金額の決め方(内容→移動→会食)
以下の順で過不足なく決めます。
- 内容:読経の座数・所要、戒名の方針を確定します。
- 移動:距離・回数・送迎有無を確認し御車代を決めます。
- 会食:実施の有無に応じて御膳料の要否を決めます。
- 役割:渡す人・タイミング・控えの保管方法を決めます。
- 最終:名目別に封筒を分け、総額と内訳を家族に共有します。
名目別の整理表(例)
項目 | 内容 | 目安 | 注意点 |
---|---|---|---|
御布施(読経料) | 通夜・葬儀・繰上げ初七日 | 5〜25万円 | 座数で変動。地域差大(文化庁資料は定価規定なし・2024年)。 |
戒名 | 等級・院号の有無 | 5〜30万円以上 | 趣旨と予算を先に共有。過度な等級志向は避ける。 |
御車代 | 寺院⇄式場の往復 | 5千〜2万円 | 距離・回数・送迎有無で調整。 |
御膳料 | 会食代替の謝礼 | 5千〜1万円 | 渡す座や要否は地域慣習を確認。 |
現金・振込・書留の渡し方ガイド
基本は現金を袱紗に包み僧侶控室で代表者が手渡しします。遠方・時間都合で振込や現金書留にする場合は、寺院の意向と受領方法(受取書・礼状)を事前に調整します。封筒は白無地の仏事用を用い、表書きを「御布施/御車代/御膳料」と分け、裏に住所氏名を記載します。
チェックリスト(最終確認)
- 住職と内訳・渡す順序を文面で合意したか
- 封筒・表書き・袱紗・渡し役は決まっているか
- 金額は端数が出ないよう調整したか
- 会場動線(控室・受付・焼香)が把握できているか
- 連絡メモを家族と共有し、控えを保存したか
よくある質問
参列規模よりも読経回数や戒名の等級、移動の有無で変動します。家族葬でも内容が同じなら一般葬と近い総額になることがあります。
「内訳の目安」を住職に丁寧に確認しましょう。読経回数や戒名等級、御膳料の有無を調整できれば総額を抑えられます。
地域慣習と移動距離によります。送迎が不要なら御車代省略の例もあり、通夜・葬儀のどちらか一方のみ渡す地域もあります。
白無地の仏事用袋に「御布施」。御車代・御膳料は別包みで各表書きを使います。薄墨は弔事一般ですが、地域差に合わせます。
お布施は本来「お礼」で領収は慣習上出ないのが一般的。ただし会計上必要な場合は「受取書」や「お礼状」で代替を相談します。
等級が上がるほど目安は上がります。戒名は「信仰とご縁」に基づくため定価はありません。希望があれば「趣旨」と「予算感」を率直に相談を。
都市部は高め、地方は落ち着く傾向。通夜・葬儀の両座での読経、戒名等級、送り迎えの距離、御膳料の有無など要素が重なるためです。
寺院は商取引ではないため「比較交渉」は不向き。代わりに内訳と希望を共有し、読経内容や移動条件の調整で納得解を探るのが現実的です。
段取りがスムーズになる一方、金銭授受は遺族↔寺院が原則。葬儀社は相場感の助言と連絡調整を担い、金額の最終判断は住職と行います。
慣習上は新札を避けた現金手渡しが多いです。遠方や日程都合で振込・書留にする場合は、事前に寺院の意向を確認しましょう。
四十九日や百箇日、年忌法要を見込むなら、初回に無理のない範囲で。継続してお付き合いできる金額設計が大切です。
地域慣習と寺院ごとの運用差が大きく、他家の額は参考程度に。自宅の条件や移動距離、読経内容が違えば金額も変わります。
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まとめ
誤解は「名目の可視化」と「渡す段取り」でほぼ防げます。内容→移動→会食の順に決め、名目別封筒で当日の混乱を無くします。
お布施は「ご縁」と地域慣習に根差します。早めの連絡で日程の軸を確保し、住職と短文で合意を積み上げれば安心です。名目別の整理表とチェックリストを印刷して持参すると、当日の判断が一貫します。