「通夜を省略して告別式と火葬だけで葬儀を済ませたい」「家族だけで静かに見送りたい」──そんなニーズに応える葬儀形式が「一日葬」です。一般葬や家族葬との違いや、実際の流れを把握しておくことで安心して準備できます。
本記事では、一日葬のタイムスケジュールや注意点をわかりやすく紹介します。
一日葬の流れはシンプルで時間を短縮できる葬儀形式
近年注目されている「一日葬」は、従来の葬儀に比べてシンプルな流れで行われるため、初めて葬儀を行うご家族にとっても負担を軽減できる形式です。特に仕事や学校などで多忙な現代社会では、参列者・遺族双方にとって時間的・経済的なメリットがあることから選ばれるケースが増えています。
一日葬とは?通夜を省略して告別式と火葬を行う形式
一日葬とは、その名の通り1日で完結する葬儀のことを指します。一般的な葬儀では「通夜」と「告別式」の2日間をかけて行いますが、一日葬では通夜を省略し、告別式から火葬までを1日で行います。
そのため、参列者の拘束時間が短く、遠方から来る親族や高齢の参列者にも参加しやすい点が特徴です。
例えば、午前中に告別式と読経・焼香を行い、午後には出棺・火葬・収骨までを終える流れが一般的です。所要時間は半日から6時間程度が目安となり、負担が少ない一方で「しっかりとお別れができるか不安」と感じる方もいるため、家族の意向や故人の希望を考慮することが大切です。
一般葬や家族葬との違い
一日葬は、一般葬や家族葬と混同されがちですが、流れや規模に明確な違いがあります。一般葬は会社関係や友人知人まで幅広い参列者を招き、通夜・告別式の2日間にわたって行う葬儀形式です。規模が大きく、準備や費用もかかります。
一方、家族葬は遺族や親しい親族・友人だけが参列する少人数の葬儀ですが、基本的な流れは一般葬と同じく通夜と告別式を行います。つまり、家族葬は「規模を縮小した一般葬」であるのに対し、一日葬は「葬儀の日数を短縮した形式」と言えるでしょう。
実際に葬儀社に確認すると「家族葬プラン」と「一日葬プラン」が別々に用意されている場合が多く、選択する際には規模と日程の両方を考慮する必要があります。
「家族だけ」で行われることが多い理由
一日葬は、形式の簡素さから「家族だけ」で執り行われるケースが多いのも特徴です。理由としては以下の点が挙げられます。
- 通夜がないため、広く参列者を招くと十分なお別れの時間が取れない
- 参列案内を限定することで準備や対応の負担を軽減できる
- 遺族自身が落ち着いた環境で故人と最後の時間を過ごせる
例えば、高齢の親を見送る際に「周囲に気を遣うことなく家族中心で過ごしたい」という意向から一日葬を選ぶケースがあります。また、コロナ禍以降は感染予防の観点からも、規模を抑えた一日葬が広く受け入れられるようになりました。
ただし「家族だけ」で行う場合でも、故人と親交の深かった知人や近隣の方に後日訃報を伝える配慮は欠かせません。参列を辞退してもらう場合には、書面や電話で事情を説明し、後日「偲ぶ会」や「お別れ会」を設けるなどの代替手段を検討すると良いでしょう。
一日葬の基本的なタイムスケジュール
一日葬は名前の通り、告別式から火葬までを1日で終える葬儀形式です。そのため、一般葬や家族葬と比べて流れがシンプルで、参列者も事前にスケジュールを把握しておくことが重要です。ここでは一般的な一日葬のタイムスケジュールと、各段階での流れについて解説します。
開式前の準備(受付・僧侶到着)
式場に到着すると、まず受付が設けられます。参列者は香典を渡し、記帳を行います。一日葬では通夜がないため、この受付が参列者と遺族が顔を合わせる最初の機会となります。遺族は早めに会場に入り、喪服や持ち物を整えておきましょう。
僧侶が読経を行う場合は、開式前に到着して控室で準備します。宗派によって読経の内容や所要時間は異なりますが、概ね20〜30分程度を想定するとよいでしょう。
読経・焼香・告別式の流れ
一日葬の中心となるのが告別式です。通常は以下のような流れで進行します。
- 僧侶の読経(20〜30分程度)
- 参列者の焼香
- 遺族・親族による焼香
- 弔辞や弔電の紹介(必要に応じて)
焼香の順番は、まず喪主、次に親族、最後に一般参列者という流れが基本です。参列者が少ない場合は比較的短時間で終わりますが、参列者が多い場合は焼香の時間が長くなるため、全体で1時間程度を見込んでおくと安心です。
出棺から火葬、収骨までの流れ
告別式が終わると、柩(ひつぎ)を霊柩車に納め、火葬場へ向かいます。これを「出棺」と呼び、故人との最後のお別れの場面です。出棺の前には、故人の愛用品や花を柩に納める「納棺の儀」が行われることもあります。
火葬場に到着すると、火葬炉に柩を納めて点火します。火葬にかかる時間はおよそ1時間から1時間半程度です。その間、遺族や参列者は控室で待機します。
火葬後は「収骨(しゅうこつ)」と呼ばれる遺骨を骨壷に納める儀式が行われます。宗派によって骨壷に納める作法が異なる場合があるため、係員の指示に従うことが大切です。
所要時間の目安と参列者が把握しておくべきこと
一日葬全体の所要時間は、準備を含めて約5〜6時間が一般的です。午前10時ごろに告別式を開始し、午後3時ごろに収骨を終えるスケジュールが多く見られます。
従来の二日間にわたる葬儀に比べて大幅に時間が短縮されるため、参列者にとっても予定を立てやすいのがメリットです。
ただし、進行状況や参列人数によって時間は前後します。特に僧侶の読経や焼香の人数が多い場合は予定より長引くことがあります。参列者は「余裕をもったスケジュールで参加する」ことを意識し、遅刻や途中退席がないよう注意しましょう。
また、遠方から参列する親族には、火葬場への移動時間や終了時刻を事前に伝えておくと、帰りの交通手段の手配がしやすくなります。
一日葬の流れを家族だけで行う場合の注意点

一日葬は、通夜を行わず告別式と火葬を1日で済ませるため、少人数での実施に適した葬儀形式です。特に「家族だけ」で行う場合は、参列者への配慮や準備がシンプルになる一方で、気をつけるべき点もあります。ここでは家族のみで一日葬を執り行う際の注意点を整理して解説します。
少人数ならではのメリットとデメリット
家族だけで行う一日葬には、次のようなメリットがあります。
- 参列者が少ないため進行がスムーズで時間が読みやすい
- 遺族が気兼ねなく故人と最後の時間を過ごせる
- 会食や返礼品の準備が最小限で済み、費用を抑えられる
一方でデメリットも存在します。親しい知人や近隣住民が参列できないため「お別れの場を設けてもらえなかった」と感じる人が出る可能性があります。また、後日お悔やみの連絡や香典を個別に受け取るケースがあり、かえって対応が増えることもあるため注意が必要です。
親族・知人への配慮や案内方法
「家族だけ」と限定して一日葬を行う場合でも、故人と縁の深い人々への配慮は欠かせません。特に親族の中には「なぜ知らせてもらえなかったのか」と不満を抱く方もいるため、事前に連絡を入れ、参列辞退の理由を説明することが大切です。
案内方法の一例としては、以下のような工夫が考えられます。
- 生前親しくしていた知人には電話や手紙で訃報を伝える
- 参列を辞退してもらう代わりに、後日お別れ会や法要の場を設けることを伝える
- 会社関係者など広い範囲への訃報は、葬儀後に落ち着いてから伝える
こうした対応により、不要な誤解やトラブルを防ぎつつ、故人とのご縁を大切にできます。
返礼品や会食の有無について
一日葬では通夜がないため、香典返しや返礼品の準備が簡略化されることがあります。ただし、「家族だけ」でも香典を受け取った場合は返礼品を用意するのが基本マナーです。少人数であれば、後日郵送でお返しをするケースも多く見られます。
また、告別式後の会食(精進落とし)を省略する家庭も増えています。代わりに火葬後に軽食を用意したり、自宅で簡単に食事を共にすることで、形式にとらわれずに家族だけの時間を過ごせます。宗派や地域の慣習によって違いがあるため、葬儀社と相談しながら準備を進めると安心です。
まとめると、家族だけで一日葬を行う場合は「負担を減らせる反面、周囲への配慮をどうするか」が大きなポイントとなります。事前に案内の仕方や返礼の方法を決めておくことで、安心して当日を迎えることができるでしょう。
一日葬の流れを円滑にするための準備ポイント
一日葬は流れがシンプルで負担が少ない葬儀形式ですが、短い時間で告別式から火葬までを行うため、事前準備が不十分だと慌ただしく感じてしまうこともあります。ここでは一日葬を円滑に進めるために押さえておきたい準備のポイントを紹介します。
事前に葬儀社へ確認しておくべきこと
まず重要なのは、葬儀社との打ち合わせを丁寧に行うことです。一日葬は一般葬に比べて時間が限られているため、細かい確認が欠かせません。確認事項の例としては以下のようなものがあります。
- 式場と火葬場の移動時間や所要時間
- 読経や焼香の時間配分
- 会食や返礼品の準備の有無
- 必要な持ち物(位牌・遺影・骨壷など)の確認
葬儀社によっては「一日葬専用プラン」が用意されており、会場・祭壇・送迎・返礼品が含まれる場合もあります。プランの内容を事前に把握し、不明点は早めに質問しておくことで当日の進行がスムーズになります。
僧侶への依頼と読経の時間
僧侶に依頼する場合は、どのタイミングで読経をお願いするのかを事前に決めておくことが大切です。
一日葬では通夜がないため、告別式のみで読経を行うケースが一般的ですが、希望によっては「納棺の儀」や「火葬炉前」で読経を依頼することも可能です。
また、宗派によって読経の時間が異なるため、所要時間を把握してスケジュールに組み込む必要があります。
例えば、浄土真宗では比較的短めの読経が多い一方、曹洞宗や天台宗ではやや時間を要する場合があります。僧侶に直接確認し、全体の進行時間に反映させると安心です。
スケジュールを無理なく進行する工夫
一日葬は5〜6時間程度で完結する葬儀形式ですが、参列者や進行状況によっては時間が押してしまうこともあります。そのため、余裕を持った進行を意識することが大切です。
具体的な工夫としては、以下の点が挙げられます。
- 開始時間を午前中に設定し、午後の火葬まで余裕を持たせる
- 焼香の順番や流れを事前に参列者へ案内しておく
- 遠方からの親族には、集合場所や解散時間をあらかじめ伝える
- 会食を行わない場合は、後日法要の場を設けると案内しておく
また、高齢者や小さな子どもが参列する場合は、移動や待ち時間に配慮したスケジュールを心がけると、参加者全員が安心して故人を見送れます。
このように、一日葬を滞りなく進めるためには「葬儀社との打ち合わせ」「僧侶との調整」「参列者への配慮」の3点が重要です。事前に段取りを整えることで、当日は落ち着いた気持ちで故人と最後の時間を過ごすことができるでしょう。
まとめ:一日葬は流れを理解すれば安心して準備できる
一日葬は、従来の二日間にわたる葬儀に比べて、流れがシンプルで時間や費用の負担を軽減できる点が大きな特徴です。通夜を省略し、告別式と火葬を1日で行うため、遺族にとっても参列者にとっても参加しやすい形式として広がっています。
今回ご紹介したように、一日葬には以下のようなポイントがあります。
- 通夜を省略し、告別式から火葬までを1日で完結する形式であること
- 一般葬や家族葬と比べて時間・費用の負担が少ないこと
- 「家族だけ」で行われるケースが多く、静かにお別れできる反面、周囲への配慮が必要なこと
- 全体の流れは約5〜6時間が目安で、事前にスケジュールを把握しておくことが重要なこと
- 葬儀社や僧侶との打ち合わせを十分に行うことで、当日の進行が円滑になること
実際の一日葬のタイムスケジュールは、午前中に告別式を行い、午後に火葬・収骨を終える流れが一般的です。そのため、遠方から来る親族も参加しやすく、仕事や学校の予定がある参列者にとっても無理のない形となります。
一方で「弔問の場が少なくなる」という側面もあるため、後日お別れ会や法要を設けて周囲に配慮することも検討すると良いでしょう。
初めて葬儀を行う方にとっては「短時間で本当に大丈夫だろうか」と不安に思うかもしれません。しかし、一日葬は葬儀社がスケジュールを組み立ててくれるため、事前に打ち合わせを重ねれば安心して臨むことができます。大切なのは「どんな形であれ、故人を悼み、心を込めて送り出す」という気持ちです。
一日葬は、現代のライフスタイルに合った新しい葬儀形式のひとつです。流れを理解し、準備を整えることで、限られた時間の中でも心のこもったお別れを実現できるでしょう。